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館長からのメッセージ

豊橋技術科学大学附属図書館の未来

中内館長
 「図書館法」という法律をご存知でしょうか?「社会教育法の精神に基き、図書館の設置及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もつて国民の教育と文化の発展に寄与することを目的とする。」とあります。この法律は公立図書館について規定したもので、大学図書館はこの法律の対象外なのですが、「そもそも図書館とは何をするための機関か」という基本理念を知るうえで重要です。例えば、図書館法の第17条には「公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない。」と規定されており、これが「図書館無料の原則」と呼ばれるものです。公立博物館などは有料であることが多いのですが(根拠法に「但し、博物館の維持運営のためにやむを得ない事情のある場合は、必要な対価を徴収することができる。」とある)、公立図書館は依然として無料です。つまり図書館とは、教育の機会均等「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。」という教育基本法の理念を頑固に体現している機関である、ということがわかります。
 一方、大学附属図書館についてですが、法人化前は国立学校設置法の第6条に「国立大学に、附属図書館を置く。」とあったものが、法人化によって廃止され、国立大学法人法には図書館に関する規定が無くなってしまいました。その代わりに大学設置基準の条文として図書館が言及されていて、これが大学附属図書館の設置根拠となっています。大学の自律性や特性を尊重するという観点もあるのでしょう。大学を取り巻く環境の変化に柔軟に迅速に対応することが期待されていることもあるかも知れません。いずれにせよ、このときから大学附属図書館は「何をするための機関か」ということを常に自問自答しなければならない運命にあると言えます。
 確かに世界は猛烈なスピードで変化し続けています。AIなどの情報技術の脅威的進歩、ディジタルメディアの多様化、グローバル化や競争原理の導入、そして少子高齢化など、大学の存在意義そのものが問われるなか、大学附属図書館もまたその価値を再構築する動きが加速しています。しかし、価値の再構築とは、価値の再発見ではないか、と思うようになりました。つまり、ディジタル化の網からこぼれ落ちてしまう手触りや匂いなどの豊かな質感、ソーシャルな場が生み出す情動など、無駄が無く「生産性の高い」社会システムのなかで、今や多くの人が忘れてしまいそうになっている価値を再び思い出させること、これこそが図書館の現代的価値かも知れません。時代を超えた図書館の普遍的な理念に立ち返り、本学の灯台として学生・教職員の知的好奇心を刺激し、キャンパス中央に立つ大樹として穏やかな空間と時間を提供できる場であり続けたい、そう思っています。

令和7年1月
附属図書館長 中内 茂樹

歴代附属図書館長

就任年月氏名備考
昭和53(1978)年4月小林陽太郎建設工学系 教授
2昭和55(1980)年4月横尾 義貫建設工学系 教授
3昭和60(1985)年4月市川 常男エネルギー工学系 教授
4昭和62(1987)年4月坂野 武男生産システム工学系 教授
5昭和63(1988)年4月秋丸 春夫情報工学系 教授
6平成3(1991)年4月紺野 昭建設工学系 教授
7平成5(1993)年4月定方 啓建設工学系 教授
8平成7(1995)年4月大呂 義雄人文・社会工学系 教授
9平成9(1997)年4月寺澤 猛体育・保健センター 教授
10平成11(1999)年4月北川 孟生産システム工学系 教授
11平成13(2001)年4月竹園 茂男機械システム工学系 教授
12平成15(2003)年4月亀頭 直樹物質工学系 教授
平成16年副学長
13平成17(2005)年4月米津 宏雄副学長
電気電子工学系 教授
14平成19(2007)年4月加藤 史郎副学長
建設工学系 教授
15平成20(2008)年4月稲垣 康善理事・副学長
16平成21(2009)年4月角田 範義副学長
物質工学系 教授
メッセージ
17平成26(2014)年4月大貝 彰理事・副学長
建築・都市システム学系 教授
メッセージ
18令和2(2020)年4月角田 範義理事・副学長/事務局長
メッセージ
19令和7(2025)年1月中内 茂樹特命理事・副学長
情報・知能工学系 教授
メッセージ
※備考欄は就任時の役職・所属

(最終更新日:2025年1月21日)